Power Of River
渓流釣り初心者から見た、釣りの魅力。
富山県と長野県の境に位置し、日本最大級のダムとして知られている黒部ダム。ダムで作り出された黒部湖は、四季折々の風景を楽しむことができる観光名所であり、入山者が比較的少ないこともあって、黒部川源流はイワナの宝庫であり、フライフィッシングの聖地としても知られる。
土曜日はアルペンスキーや外国人観光客、登山客で駅が賑わう。夜中の3時に駅前の駐車場に到着し、一晩車中泊をした後、車から出て背伸びをすると、目の前に広がる雄大な景色。ここから楽しい釣りの一日が始まることを予感し、心が躍る。

電気バスに乗り、トンネルを進む。山頂に着くと、多くの人が向かう反対方向に歩いていく登山ルートがある。幸いなことにこの日は人が少なく、順調に前へ進む。せっかく登ってきた山頂だが、ここからひたすら谷を下って川を目指す。道中、すでに釣りを開始している人々を横目に見ながらさらに山奥へと向かう。


40分間。5月初めの涼しい風が吹く中、山肌を縫ってひたすら歩いていく。時折立ち止まっては、川の中に泳ぐ影を探す。

ポイントを決めてからは速かった。ルアーとフライを交互にポイントへ投げていき、擦れていない川の魚が反応してくる。


初めて触るイワナの感触。しなやかな体で、たまに元気よく跳ねる様子は手のひらに命を握っているような感覚だった。魚にとって人の手は炎のように熱く、長時間触ってしまうと火傷する可能性もあると初めて知る。キンキンに冷えた透き通る水の中に手をつけながら、そーっとイワナを包んで泳がすと、スルスルと元いた場所に戻っていく。
朝9時から14時まで。自然に身を置きながら、自然と向き合う至福の時間であった。

登る時は愚痴ばかり。水で重さが増したブーツを引きずりながら一歩ずつ登っていくも、歩いても歩いても着かない。軽やかに登るふたりの背中を見ながら、途中で少し休みながら、元のトンネルを抜けてバス乗り場に着いた頃には汗も引いていた。「もう来たくない?」と聞かれるも、着いてしまうとやっぱり素晴らしい場所なので、きっとまた初春に訪れるであろう。